特別寄稿 劇団人形の家第1回公演によせて
 コシノジュンコ(ファッションデザイナー)
 "人魚姫"をみて私はすっかり驚かされてしまいました。私自身、生きた人間を相手にして仕事をしていますので、死んだ動かない人形等には、本来小さなイメージしかもって居りませんでした。というより特別な関心をもっていなかったのです。
"人魚姫"は生きて動く人形でありまして、それは、人間の世界の抽象的なものを具象化して私たちにみせてくれました。こんな芸当をしていて、それがかえって判りやすく、しかも、サマになっていて感動を誘うのは、人形劇だけがもっている面白さだと思います。"人魚姫"は光と音と人形が描いてくれた限りなくロマンチックなお芝居でした。マルドロールの失恋の悲しみが結晶され、純化されて、高く高く昇って行ったあのラストシーンを私は今でも忘れません。お遊び人形劇でない、本当のものをつくって下さった"人形の家"のかたがたに、心から拍手を送りたいと思います。